開業医と勤務医の違いは?医師数と年齢・立場と手続を統計で比べる

先に、答え。
開業医と勤務医の大きな違いは、診療所を開設して管理する立場か、雇用契約で病院や診療所に勤める立場かです。
厚生労働省の2024年の統計では、診療所の開設者などは約7万人、病院・診療所の勤務者は約25万6千人です。
勤務を続ける条件と、開業の時期を分けて確かめる
この記事の目次
開業医と勤務医の違いとは?勤務医とは雇用されて働く医師
勤務医とは、病院や診療所に雇用されて診療する医師のことです。開業医は、自ら診療所を開設し、多くの場合は管理者として診療所の運営も担う医師を指します。どちらも医師として診療する点は同じですが、契約の形と、誰が手続や責任を負うかが変わります。
| 比べる項目 | 勤務医 | 開業医(診療所を開設する医師) |
|---|---|---|
| 立場 | 雇用契約に基づいて働く従業者 | 診療所の開設者。多くは管理者を兼ねる |
| 働く条件を決めるもの | 勤務先と結ぶ労働契約と、就業規則 | 開設者として自分で決める。職員を雇う側になる |
| 医療法の手続 | 勤務先が行う | 開設後10日以内の届出(病床がある場合などは事前の許可)を自分で行う |
| 保険診療の手続 | 勤務先が保険医療機関の指定を受けている | 開設者として保険医療機関の指定を申請する |
| 給与・所得の扱い | 勤務先から給与を受け取る | 診療所の事業として収入と経費を管理する |
勤務医は、入職する前に労働条件通知書で業務・勤務時間・給与を確かめます。確かめ方は医師の労働条件通知書の確認点で整理しています。開業する場合の届出と許可の順番は、医師の開業は何から進めるかで詳しく扱っています。
開業医と勤務医の人数を厚生労働省の医師統計で比べる
厚生労働省の「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計」は、医師が届け出た従事先と業務の種別を集計しています。統計の区分には「開業医」「勤務医」という言葉はないため、この記事では「開設者又は法人の代表者」を開業医に近い区分、「勤務者」を勤務医に近い区分として読みます。
| 統計の区分(2024年12月31日現在) | 医師数 | 全国の医師に占める割合 |
|---|---|---|
| 診療所の開設者又は法人の代表者 | 70,046人 | 20.1% |
| 診療所の勤務者 | 41,653人 | 12.0% |
| 病院(医育機関附属の病院を除く)の勤務者 | 156,171人 | 44.9% |
| 医育機関附属の病院の勤務者 | 58,280人 | 16.8% |
| 病院(医育機関附属の病院を除く)の開設者又は法人の代表者 | 4,942人 | 1.4% |
勤務者の3区分を足すと256,104人で、全国の医師347,772人のおよそ7割を占めます。診療所の開設者又は法人の代表者は、およそ5人に1人です。
前回の2022年の統計と比べると、診療所の勤務者は36,988人から41,653人へ4,665人(12.6%)増えました。一方、診療所の開設者又は法人の代表者は70,360人から70,046人へ314人減っています。診療所で働く医師のうち、勤務者として働く人が増えていることが分かります。
ただし、「法人の代表者」には医療法人の理事長なども含まれ、開設者と勤務を兼ねる働き方などはこの区分だけでは分かりません。人数は、医師が届け出た主な従事先によるものです。
開業医と勤務医の年齢の違い(病院と診療所の平均年齢)
同じ統計では、医療施設に従事する医師の年齢を、病院と診療所に分けて集計しています。病院では30〜39歳が、診療所では60〜69歳が最も多い年齢階級です。
| 施設の種別 | 医師数 | 平均年齢 | 最も多い年齢階級 |
|---|---|---|---|
| 病院(医育機関附属の病院を除く) | 161,113人 | 47.9歳 | 30〜39歳(22.6%) |
| 医育機関附属の病院 | 58,280人 | 39.7歳 | 30〜39歳(41.4%) |
| 診療所 | 111,699人 | 60.1歳 | 60〜69歳(28.5%) |
診療所に従事する医師のうち、50歳以上は合わせて85,568人で、診療所の医師の76.6%に当たります。29歳以下は432人(0.4%)でした。この表は施設ごとの集計で、診療所には開設者と勤務者の両方が含まれます。開業医だけの平均年齢ではない点に注意してください。
年齢の分かれ方からは、病院で勤務医として経験を積み、その後に診療所へ移ったり開業したりする医師が多いことがうかがえます。ただし統計は人数の集計で、一人ひとりの経歴を追ったものではありません。
開業医と勤務医で変わる手続と確認先(勤務医から開業するとき)
勤務医から開業医になると、それまで勤務先が担っていた手続を自分で行います。主なものは次のとおりです。
| 変わること | 勤務医のとき | 開業するとき | 確認先 |
|---|---|---|---|
| 診療所の開設 | なし | 医療法第8条により、開設後10日以内に届け出る | 開設地の保健所 |
| 保険医療機関の指定 | 勤務先が受けている | 健康保険法第65条により、開設者が申請する | 地方厚生(支)局 |
| 保険医療機関の管理者 | 勤務先が定める | 2026年4月から、保険医であることに加えて診療経験などの要件がある | 地方厚生(支)局 |
| 税の手続 | 勤務先が源泉徴収する | 事業を始めた年の確定申告期限までに開業届を出す | 所轄の税務署 |
特に、保険医療機関の管理者の要件は、開業の時期に関わります。厚生労働省の「保険医療機関の管理者の要件・責務について」では、2026年4月1日時点で臨床研修を終えている医師は、臨床研修期間を含め、病院または診療所で3年以上保険診療などに従事した経験があることを基本の要件としています。自分の勤務歴で要件を満たすかは、管轄の地方厚生(支)局で確かめましょう。
開業の手続の順番と、届出と許可の違いは医師の開業は何から進めるか、診療所の管理者として勤める働き方は管理医師への転職で確認することで整理しています。
開業医と勤務医で迷うときに先に確かめること
開業医と勤務医のどちらがよいかは、診療科、地域、家族の事情、資金の考え方によって変わります。どちらかが有利と決められるものではありません。迷うときは、次の順番で確かめると考えを整理しやすくなります。
- 勤務医として続けたい条件を書き出す。当直の有無、勤務日数、外来と病棟の割合などを分けて考えます。医師の当直なしの確認点や医師の週4日勤務も参考になります。
- 診療所の勤務医という選択肢も比べる。統計のとおり、診療所の勤務者は増えています。病院からクリニックへ移るときの確認点は医師のクリニックへの転職で整理しています。
- 開業を考えるなら、管理者の要件を満たす時期を先に確かめる。要件を満たす前に退職すると、開業の時期がずれることがあります。
- 開業までの間に勤務先を移る場合は、勤務日数や勤務形態の条件を決めてから探す。転職の進め方は医師の転職方法で手順を整理しています。
勤務医の給与と開業医の事業収入は、同じ物差しでは比べられません。給与の統計の読み方は医師の年収の比べ方で扱っています。
開業医と勤務医についてよくある質問
勤務医とは、どういう医師のことですか?
病院や診療所に雇用されて診療する医師のことです。厚生労働省の医師統計では「病院の勤務者」「診療所の勤務者」などの区分で集計されており、2024年12月31日現在、病院・診療所の勤務者は合わせて256,104人でした。
開業医と勤務医は、どちらが多いですか?
2024年の医師統計では、診療所の開設者又は法人の代表者が70,046人、病院・診療所の勤務者が256,104人で、勤務者の方が多くなっています。統計の区分は開業医・勤務医という言葉と完全には一致しないため、目安として読んでください。
勤務医のまま診療所で働くことはできますか?
できます。診療所の勤務者は2024年12月31日現在で41,653人おり、2022年から4,665人増えています。管理者を任されるかどうかで責任の範囲が変わるため、求人の職位と職務は契約の前に確かめましょう。
出典の確認日:2026年11月7日(医療法・健康保険法・管理者の要件・開業届は2026年11月6日)。比べる項目の表と確かめる順番は、出典をもとに編集部が作成しました。人数の合計と割合の一部は、統計の数値から編集部が計算しました。
- 厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」医師:表1(施設・業務の種別にみた医師数)、表3(年齢階級、施設の種別にみた医療施設に従事する医師数及び平均年齢)。
- e-Gov法令検索「医療法」:第7条(開設の許可)、第8条(開設後10日以内の届出)、第12条(開設者による管理)。
- e-Gov法令検索「健康保険法」:第65条(保険医療機関の指定の申請)、第70条の2(保険医療機関の管理者の要件)。
- 厚生労働省「保険医療機関の管理者の要件・責務について」:2026年4月1日からの要件。
- 国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」:開業届の提出時期。
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