医師の副業は許可が必要?就業規則と労働時間の通算を転職前に確認

先に、答え。
医師の副業は、勤務先の就業規則にある届出や許可の決まりと、勤務先をまたいだ労働時間の通算を先に確認します。
公務員として働く医師は法律で許可が必要な場合があり、転職先を選ぶときも副業の扱いを条件の一つとして聞いておきましょう。
副業の扱いと勤務条件を分けて、相談先に確認する
この記事の目次
医師の副業は勤務先の就業規則で届出や許可を確認する
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定版)は、裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由であり、企業が制限できるのは例えば次の場合と解されていると説明しています。
| ガイドラインが挙げる場合 | 医師の副業で考えられる例 | 確認するところ |
|---|---|---|
| 労務提供上の支障がある場合 | 副業の時間が長く、本業の勤務に支障が出る | 就業規則の副業・兼業の条文 |
| 業務上の秘密が漏洩する場合 | 勤務先の情報を副業先で扱うおそれがある | 秘密保持の規程や誓約書 |
| 競業により自社の利益が害される場合 | 近くの医療機関で同じ診療を行う | 競業に関する規程 |
| 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合 | 勤務先の名前を出した活動 | 就業規則の服務の規定 |
同じガイドラインは、使用者が労働者からの申告などで副業・兼業の有無と内容を確認する方法として、就業規則や労働契約に届出制を定めることを挙げています。厚生労働省は、企業が労働者の申告に基づいて確認するときに参考にできる「副業・兼業に関する届出様式例」も公開しています。
勤務先が届出制か許可制か、どの様式で出すかは勤務先ごとに違います。副業を始める前に、今の勤務先の就業規則の該当する条文と、人事・労務の担当の案内を確かめます。
医師の副業で労働時間が通算される場合とされない場合
労働基準法第38条第1項は「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」と定めています。ガイドラインは、事業主の異なる複数の事業場で、労働基準法の労働時間規制が適用される労働者に当たる場合に、その労働時間が通算されると説明しています。
| 副業の形 | 労働時間の通算 | ガイドラインの説明 |
|---|---|---|
| 別の医療機関に雇用されて働く(非常勤の外来など) | 通算される | 労基法第38条第1項により、複数の事業場の労働時間を通算 |
| 労基法が適用されない働き方 | 通算されない | 例としてフリーランス、独立、起業、共同経営、アドバイザー、コンサルタント、顧問、理事、監事など |
| 労基法は適用されるが労働時間規制が適用されない場合 | 通算されない | 管理監督者・機密事務取扱者、監視・断続的労働者などの例 |
通算されない場合でも、ガイドラインは、過労などで業務に支障を来さないよう、申告などで就業時間を把握し、長時間にならないよう配慮することが望ましいとしています。どの形に当たるかは契約の中身で決まるため、副業先との契約書で雇用か業務委託かを確かめます。
医師の副業と時間外労働の上限(2024年4月から)
厚生労働省の「医師の時間外労働の上限規制」の案内では、2024年4月から医師にも時間外・休日労働の上限が適用されています。個人に対する上限として、副業・兼業先の労働時間も通算して管理すると書かれています。
| 水準 | 個人の時間外・休日労働の上限(年) | 月の上限 |
|---|---|---|
| A水準 | 960時間 | 100時間未満(例外あり) |
| B水準・連携B水準・C水準 | 1,860時間 | 100時間未満(例外あり) |
本業の勤務先と副業先の時間を合わせて数えるため、副業の申告は勤務先の時間の管理にも関わります。勤務先をまたぐ時間の数え方は医師の非常勤掛け持ちで確認することに、当直の時間の扱いは医師の当直と宿日直許可にまとめています。
公務員の医師の副業は法律で許可が必要な場合がある
国立や公立の医療機関で公務員として働く医師は、就業規則とは別に、法律の兼業の決まりが関わる場合があります。
| 対象 | 法律の条文 | 定められていること |
|---|---|---|
| 国家公務員 | 国家公務員法第104条 | 報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員などを兼ね、その他いかなる事業に従事し、もしくは事務を行うにも、内閣総理大臣と所轄庁の長の許可を要する |
| 地方公務員 | 地方公務員法第38条第1項 | 任命権者の許可を受けなければ、営利企業の役員などを兼ね、自ら営利企業を営み、または報酬を得ていかなる事業もしくは事務にも従事してはならない(ただし書きで、短時間勤務の職などを除く非常勤職員は対象外) |
| 地方公務員(許可の基準) | 地方公務員法第38条第2項 | 人事委員会は、人事委員会規則で任命権者の許可の基準を定めることができる |
公立病院でも、運営の形によって職員が公務員に当たるかどうかが変わります。勤務先の運営の形は公立病院へ転職する前に確認することを参考にし、許可の手続と基準は勤務先の人事の担当に確認してください。
医師の副業を転職前に確認する質問リスト
副業を続けたい医師は、転職先の候補を比べるときに、副業の扱いを勤務条件の一つとして聞いておきます。
| 確認の場面 | 聞くこと | 残す形 |
|---|---|---|
| 応募・面接の段階 | 副業・兼業は届出制か許可制か、制限される場合はどんなときか | 回答した人と日付のメモ |
| 内定の段階 | 就業規則の副業・兼業の条文、届出の様式と出す時期 | 就業規則の該当部分の写し |
| 入職の前後 | 今の副業先の勤務時間を、どの方法で申告するか | 申告の方法の案内 |
- 今の副業は、転職先に申告する必要があるか
- 副業先での勤務が雇用か業務委託か、契約書で確かめたか
- 本業と副業を合わせた時間外・休日労働が、勤務先の水準の上限を超えないか
- 転職先が公務員に当たる職場か、兼業の許可の手続があるか
勤務条件の書面の読み方は医師の労働条件通知書で確認することも参考にしてください。
医師の副業についてよくある質問
勤務医は副業をしてはいけないのですか?
一律に禁止されているわけではありません。厚生労働省のガイドラインは、労働時間以外の時間の利用は基本的には労働者の自由で、制限できるのは労務提供上の支障がある場合などと解されていると説明しています。実際の決まりは勤務先の就業規則で確認します。
業務委託の副業でも、勤務先に届け出る必要はありますか?
労働時間の通算の対象になるかと、勤務先への届出が必要かは別のことです。届出の対象は勤務先の就業規則で決まるため、雇用でない副業も含むかを条文で確かめます。
公立病院で働く医師が非常勤の外来をするには、許可が要りますか?
職員が地方公務員に当たる場合、地方公務員法第38条第1項により、報酬を得て事業や事務に従事するには任命権者の許可が必要です。同項のただし書きで、短時間勤務の職などを除く非常勤職員は対象外とされています。自分が対象かどうかと手続は、勤務先の人事の担当に確認してください。
出典の確認日:2026年11月2日。確認の質問と表は編集部が作成しました。
- 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定版):副業・兼業を制限できる場合、届出制による確認、労働時間が通算される場合とされない場合。
- 厚生労働省「副業・兼業」:ガイドライン、モデル就業規則、副業・兼業に関する届出様式例。
- 厚生労働省「医師の時間外労働の上限規制」:水準ごとの年の上限と月の上限、副業・兼業先の労働時間の通算。
- e-Gov法令検索「労働基準法」:第38条第1項(労働時間の通算)。
- e-Gov法令検索「国家公務員法」:第104条(他の事業又は事務の関与制限)。
- e-Gov法令検索「地方公務員法」:第38条(営利企業への従事等の制限)。
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